こんにちは、しば(@sibambajinji)です。
書評のお時間です、このタイトル見たことありますか?ぼくは今日読み終えました。
約10時間で。
基本本は読みなれているものの長い本でした。
ただ、めっちゃ良い本だったので10時間かけずに3分で大体大事なところを伝えます。
そしてもちろんネタバレしかないので、自分でピクサーの創業からのお金の話を読みたい!って人は読まないほうが吉。
帯が間違えてヒットしてない残念な良書
まず最初にこの引用を読んでみてください。
"この日、数年ぶりにピクサーへ向かう途中、私は、スティーブの自宅前で車のスピードを緩めた。悲しみと懐かしさがあふれる。もう一度、もう一度だけでいいから、ここで車を止め、彼が在宅かどうかを確かめられたらどんなにいいだろう。裏門から入り、庭に育つさまざまな野菜に感嘆の声をあげ、勝手口から家に入っていけたらどんなにいいだろう。おいしそうな匂いを堪能しつつ寡黙なシェフにあいさつし、廊下を進んでスティーブの仕事部屋へ行き、ドアをそっとノック。中をのぞき、彼がいるかどうかを確認する。そして、もう一度、もう一度だけでいいから、そこに彼がいて、にっこり笑うと、こう言ってくれたらどんなにいいだろう。「やぁ、ローレンス。散歩に行くかい?」"
『PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』(ローレンス・レビー, 井口耕二 著)
どうですか?いきなり本の最後の一節を読まされた感想は笑
別に意地悪したくて引用したわけではないので悪しからず。
この本は財務最高責任者としてピクサーに入社した”ほぼ創業者”の視点から見たアップルとピクサー、そしてスティーブジョブズのお話です。
もうこれだけで面白そうなのに
帯のキャッチコピーは「世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話」
まず、日本人はお金の話を好みません。
そこが多分大きくずれている。もちろん、お金の流れと苦労話そこからのIPOなど史実に基づくと確かにそう。
でももっと他にあるだろ!
ってつい思うほど面白い内容です!
いきなり暗転したエンディングの後の後日譚みたいな引用を持ってきたのは一番この本の良いところを表しているから。
それはなぜか
ずっとそばにいた人が見てきた生身のスティーブ・ジョブズがそこにはあります。
こんな言い回しなの?とかこういうリアクションなんだとか生々しい(特にお金が絡んでいるので)
そこに人間味や苦労した時代の背景が読み取れます。そこがぼくをグイグイほんに引き込みます。
10時間かかる本(おそらく普通は4、5時間かな)は最後まで読み終えるのに苦労しますが、この本は読んでいる中で知人に
「今ピクサーお金めっちゃ困ってる」
「トイストーリーもう少しで完成しそう」
「やばいめっちゃヒットした」
とか、なんというか本当にその瞬間に居合わせているのかというくらいの感覚で共有していました。(トイストーリーもう少しで完成しそうと言ったら「4」のことかと聞かれました笑)
本全体像で言えば茨の道であった過去を紐解く本当に刺激的なストーリーです。
ぼくはこれが映画になったら見にいくと思います。
要約:実はスティーブ・ジョブズのサクセスストーリー
ざっくりと10段階で流れと要点をかくと以下の通り
1:スティーブ・ジョブズのヘッドハンティングで最高財務責任者が上場企業から「トイストーリーの断片数分」で感動し入社(これが主人公)
2:でも、入社したらスティーブ・ジョブズは嫌われ者だった
3:しかも蓋を開けたら、ディズニーとの契約ががんじがらめ
4:一本仕上げるまでに凄まじい年月がかかる(最初から計算するとトイストーリーが出来上がるまで16年経過してた)
5:当時の技術では誰もなし得ていない3Dキャラの映画という偉業だから作業は難航(その間ジョブズが毎月お金を渡す)
6:社員はクリエイターのすごい集まりだったけど、冷遇されていて危機的な状況。株式公開に向けてアニメの制作と上場準備への奔走
7:ヒットする確率の低さ、しかし超大ヒットによってスティーブ・ジョブズは返り咲き億万長者に
8:ピクサーブランドを確立するためにディズニーとの交渉や続編の努力を重ねる
9:ピクサーが安定し、スティーブ・ジョブズがアップルへ戻る日がくる
10:ディズニーへ売却し委ねていく(その後著者は哲学の道へ)
まず最初の方の入社時ではスティーブ・ジョブズの嫌われ方が半端じゃない。
そしてその企業の中で転職に失敗したと嘆く主人公が他人事ではない。
ピクサーは初期は映画制作に圧倒的なリソースをかけて長い年月をかけて制作していたので、資金はディズニー、スティーブ・ジョブズのポケットマネーから払われていたのです。(ジョブズからは毎月ってあたりが嫌ですが)
そして、ジョブズが嫌われている理由の1つにストックオプションを支払っていなかったということでスタッフからは不満がピークになっていました。
このあたりはジョブズのキレるポイントだったらしく著者も慎重に進めています。
でも、改めてジョブズがすごいなと尊敬したのは
映画やクリエイティブなシーンにイノベーションを起こすというビジョンで長期間支援し続けていたこと。(これはシリコンバレーでは異例らしい)
そしてそれが見事に現実になること。強い想いの可能性を感じられる出来事です。
信念を曲げない人だったんだという視点を得ることもできました。条件交渉の際は譲歩案は用意せず自分の決めた案が通らなければNOを突き通していました。
このポリシーがあったからこそ今のピクサーがあったと思えるほどですし、この後に続くiphoneの登場など神がかっているストーリーをぼくたちは知っています。
だからこそ読むべき価値がある
シリコンバレーとかスタートアップとか興味ある人はぜひ
帯は間違いなく失敗していますし、ピクサーに興味津々なユーザーは映画のファンとかでしょう。
ぼくが帯を考えるとしたら…
「ずっとスティーブ・ジョブズの隣を歩いてきたぼくが初めて書くピクサーの奇跡」んー60点!
でも、ぼくも”土井英司さん”にこの本を熱く進められてからは読むしかないと読破しました。
読んでよかった。
シリコンバレーというか、ここまで面白い起承転結のあるサクセスストーリーは他にあまり読んだことがありません。規模が違いすぎる。
最初の引用はぼくが一番好きな一節ですし、実際にアメリカに行ってスティーブ・ジョブズの家の写メを撮ったことを思い出しながら読みました。
最後にピクサーを軌道に乗せ、悩みながらも著者の第二の門出に引用されていたファインディングニモの言葉をどうぞ
"泳ぎましょ。さぁ泳ぎましょう。さぁ、どんどんどんどん、泳ぎましょうよ。"
『PIXAR 〈ピクサー〉 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話』(ローレンス・レビー, 井口耕二 著)
本当に偉大な人だったんだとまた1つファンになる一冊でした。
ぼくもあなたも泳ぎ続けましょう!
ありがとうございました!